グランド・ピアノ

グランド・ピアノ

グランド・ピアノは地面と水平にフレームと弦を配し、弦は奏者の正面方向に張られる。
そのため、グランド・ピアノはきわめて大型の楽器となり、充分に共鳴の得られる、天井の高い広い部屋に設置することが理想的である。
グランド・ピアノは大きさによっていくつかに分類される。
製造者やモデルによって違いはあるが、大まかに言って、「コンサート・グランド」(全長がおおよそ2.2mから3m)、「パーラー・グランド」(おおよそ1.7mから2.2m)、これらよりも小さい「ベビー・グランド」(ものによっては幅よりも全長が短い)に分けられる。
ベビー・グランドはゾーマー社が1884年に特許を取得している。
他の条件がすべて同じであれば、長い弦を張った長いピアノの方が響きがよく、弦のインハーモニシティ(非調和性)が小さい。
インハーモニシティとは、倍音の周波数の、基本周波数の整数倍からの遠さである。
短いピアノは、弦が短く、太く、固いため、弦の両端が振動しにくい。
この影響は高い倍音に顕著であるため、第2倍音は理論値よりも若干高くなり、第3倍音はもっと高くなる。
このようにして、短いピアノではインハーモニシティが大きい。
短いピアノではダンパーペダルを踏んだときに共鳴する弦が少ないので、音色が貧弱である。
一方、コンサート・グランドでは弦長があるため短いピアノよりも自由に振動でき、倍音が理想に近くなる。
一般的にはフルサイズのコンサート・グランドは専用ホールなどでの演奏会で用いられ、より小型のグランド・ピアノは家庭などで用いられる。

アップライト・ピアノ

アップライト・ピアノ

アップライト・ピアノは、フレームと弦を地面と垂直に配し、鍵盤とハンマー部分から上下に延びるように作られているため、グランド・ピアノよりも場所を取らない。
一般に、水平に動くハンマーでは、反応のよいピアノ・アクションを製造することは難しいと見なされている。
これは、ハンマーの戻りがバネに依存しており、経年劣化するためでもある。
これに対して、グランド・ピアノではハンマーは重力によって戻るので、アップライトのハンマーよりも動きが一定であり、演奏のコントロールも楽になる。
しかし、通常はよく調整されたアップライト・ピアノは調整されていないグランド・ピアノよりも弾きやすく、現在では最高品質のアップライトであれば、一部の同程度の大きさのグランド・ピアノには負けない程度の音質と反応のよさを得ている。
グランド・ピアノのアクションがアップライト・ピアノのアクションに勝っている1つの重要な点は、グランド・ピアノにはアクションの中にレペティションレバーという特別な機構があり、アップライトにはこれが欠けているという点である(後述)。
この機構により、グランド・ピアノでは連打やスタッカート、トリルなどをアップライトよりも素早く、制御して演奏することができる。
アップライト・ピアノのうち、高さの低いものを特に「スピネット・ピアノ」と呼ぶ。

その他

トイピアノは19世紀に製造が始まった、元来は玩具用のピアノである。
1863年、アンリ・フルノーがピアノ・ロールを用いて自動演奏する自動ピアノを開発した。
自動ピアノでは紙製のパンチ・ロールを使って演奏を記録し、気圧装置を使ってこれを再生する。
現代の自動ピアノとしてはヤマハのディスクラヴィーアがあり、これはソレノイドとMIDIを使用したものである。
近年では通常のピアノを切り替えによって電子ピアノとしても使用できるサイレント・ピアノも登場している。
アーヴィング・バーリンは、1801年にエドワード・ライリーが開発した移調ピアノという特殊なピアノを使用した。
これは鍵盤の下に備えられたレバーによって、望みの調に移調できるというものであった。
バーリン所蔵ピアノのうちの1台はスミソニアン博物館に収められている。
20世紀現代音楽の楽器として、プリペアド・ピアノがある。
プリペアド・ピアノは標準的なグランド・ピアノに演奏前にさまざまな物体を取り付けて音色を変えたり、機構を改造したものである。
プリペアド・ピアノのための曲の楽譜には、奏者に対してゴム片や金属片(ねじ・ワッシャーなど)を弦の間に挿入する指示が書かれていたりする。
1980年代以降、サンプリング技術を利用して打鍵にあわせて音を再生する電子ピアノが登場した。
上位モデルではペダルや、実際のピアノの感触を再現した鍵盤、多様な音色、およびMIDI端子を備えている。
しかし、現在の技術水準ではアコースティックピアノの要である打弦されていない弦の共鳴による響きを完全に再現することは困難であり、物理モデル音源技術などを用いた開発が続けられている。

その他

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